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天照の運営者が、イヤシロチ(パワースポット)・エネルギーグッズについての情報を発信します。 ホームページ http://www.tensyou-mtk.com/ 「位山 波動」で検索。
「リーダーTさん VS 天空昭雄 III」
             作者からのお願い

         「時間の無駄なので読まないように」



 玄関のチャイムが鳴った。

「千歳ちゃん、悪いけどドアの鍵、開けてあげて」

「誰でしょう?」

「Tさん」

「どうして分かるんです? 直感ですか?」

「いや、ちがう。なぜ分かったかは、あとで判明する」



 私の前に立ったTさんは、鬼のような形相をしていた。

「天空、おれがなぜ来たか分かってるよな」

「ええ」私はそう答えると、ちゃぶ台の向こうを手で指し示して、「まあ、お座りください」

 にらみ合った二人をとりなすように、

「何か飲みますか?」と恐る恐る千歳が言った。

 Tさんは鬼のような顔から急に笑顔になって、

「悪いね、千歳ちゃん。冷たいお茶もらえる?」

「はい。社長は?」

「おれも冷たいお茶でいい」



 千歳がお茶を入れて戻ってくるまで、二人は黙ったままにらみ合っていた。

 Tさんはお茶を一口飲むと、

「千歳ちゃんが煎れてくれたお茶は、おいし・・・くない。味があまりしない」

「ルルドのプレートでエネルギー化した水で煎れたんです。味がとんじゃってますか? いまおいしくしてあげますね」

 千歳はえいっとお茶に気合を入れた。

 Tさんはまた一口飲んで、

「おいしくなってる。千歳ちゃん、意識エネルギーが使えるようになったの?」

「はい。社長に教えてもらいました」

「千歳ちゃん、そういうことは、ちゃんとした先生にならったほうがいいよ。中途半端なやつに習うと危険だよ。こんどおれの家に来なさい。一から教えてあげる。ぱっと出のグッズ屋とちがって、おれはこの道、三十年だからね。行者のような修行もしたんだよ」

「大峰の奥駆けしたことありますか?」

「いや、それはない」

「富士山登山」

「それもない」

「白山登山」

「ふもとの白山ひめ神社しか行ったことがない」

「月山」

「月山も登ったことないな」

「山登りはしなかったんですか?」

「したよ」

「どんな山に登ったんですか?」

「高尾山」

「標高599メートル」私は口をはさんだ。

「御岳(みたけ)山」

「標高929メートル」

「筑波山」

「標高876メートル」

「位山にも登った」

「標高1529メートル。しかし、登山口から山頂まで、土地の人間は15分で駆け登る。おれですら歩いて30分で登るぞ」

 千歳はブッと吹き出して

「簡単に登れる山ばかりですね。それにしても社長、山の標高をよく覚えてますね」

「いや、忘れてる。ネットで調べながら書いてる」

「山高きをもって尊しとせず 。これは登山家の深田久弥(ふかだきゅうや)の言葉だ」Tさんはそんな負け惜しみを言った。



 また玄関のチャイムが鳴った。

「頼んでおいた寿司がきた」と言いながら私は立ち上がった。

 器を受け取って戻ってくると、

「Tさんの分も頼んでありますから、遠慮なく食べてください」

「お前はおれが今日来るのが分かっていたのか?」

「ええ」

「なぜだ?」

「理由は簡単です。私がこの話の作者だからですよ」

「ということは、おれの言動はお前にコントロールされているというわけか?」

「そうです」

「どうりで。言動が自分らしくないとさっきから感じていたのだ。しかし天空、ずるくないか? 自分ばかりよく書いて」

「確かにここまではTさんの方を悪く書いてあります。が、後半は私の方を悪者にしてあります。自分をよく書いてばかりじゃ、不公平だなと思いまして・・・」




 寿司の器が空になる頃、Tさんは酔っ払って寝ていた。

「千歳ちゃん、もう帰っていいよ。あとはおれがやるから」

 千歳が帰ると、私は寿司屋に電話をかけた。

「食べ終わったので、下げに来てもらえますか? 領収書は何々(Tさんの会社の名前)でお願いします」

 10分ほどして寿司屋の出前持ちが来た。私は仰向けに寝ているTさんを、「よっこいしょ」と言いながら裏返しにすると、ズボンのポケットから財布を抜いた。

「おいくらですか?」

「1万4千8百円です」

「失敗した。アワビをもっと頼んでおくんだった」

「はあ?」

「いや、こっちのこと」

 領収書を入れた財布をズボンに戻すと、Tさんを仰向けに戻してから揺さぶった。

「起きてください。駅まで送ります」




 バイクのわきでTさんにヘルメットをかぶせた。

 Tさんは急にしらふになった。

「おい、天空。酔っ払いをバイクのリアシートに乗せるのは、よした方がいいんじゃないのか?」

「話の都合で必要なのです」

「つまり、抵抗しても無駄というわけだ」

「そうです」

 バイクにまたがると、

「しっかりつかまっていてくださいね」と私は言った。

「しっかりつかまっていると、安全?」

「いいえ」

「すごくやな予感がする」

「痛い思いをするだけですから、心配しないでください。それではまた酔っ払いになってください」

 Tさんの体がグニャリとなった。




 カーブを曲がったとき、後ろが急に軽くなった。振り向くと、Tさんが道端に落っこちていた。

「まったく、しょうがねえな。しっかりつかまっていてくださいねって、言ったのに」

 Uターンして戻った。

 Tさんは右肩を左手でさすっていた。

「痛い。痛いよー」

 バイクから降りて私は言った。

「痛いと思うから痛い。痛くないと思えば痛くない。痛くない、痛くない、痛くなーい、渇」

「痛くなくなった。君ってグッズを作るしか能のないやつだと思っていたけど、ヒーリングもできるのね」




 あくる日の午後、Tさんの奥さんから電話がかかってきた。

「朝起きたとき、主人が肩が痛い、肩が痛いと言うものですから、病院に行かせたところ、肩の骨にひびが入っていました。昨夜、何かあったのでしょうか?」

「JRの蒲田駅の階段で、足を滑らせて転げ落ちてしまったんです。病院に行った方がいいんじゃないですかと自分は言ったのですが、Tさんが大丈夫と言うものですから・・・。自分がついていながら申し訳ありません」

 そんな嘘を平気でついていた。この程度の嘘を平気でつけるようでなければ、エネルギーグッズ屋はやってられない。

「天空さんのせいじゃないですよ」

「こんなときにこんなことを言うのもなんですが、お寿司ご馳走様とおれが言ってたとお伝えください」

 こう言ったときはさすがにちょっと良心がとがめた。

 天照を始めるとき、私が真っ先にしたことは、良心を捨て去ることだった。良心がまだ少し残っているのを知って、ひどく意外だった。
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